質問

看護師の業務範囲見直しのその後
厚生労働省は、看護師の業務範囲拡大について、どのような方針を示しているのでしょうか。また、その他の職種においては、検討が行われるのでしょうか。

答え

(1)今後の看護師の業務範囲拡大のゆくえ

 これまでの議論で厚労省が整理した論点のうち、「看護師の役割の拡大」の基本方針では、高度な教育を受けた看護師とそれ以外の看護師のどちらか一方の裁量や業務範囲を広げる案のほか、両方の役割を拡大する案も示されていました。
 日本看護系大学協議会が推進する「高度専門看護師」と、日本NP協議会が資格化に取り組んでいる「診療看護師」については、患者のニーズや看護師のキャリア形成などの観点から、早急な検討が望まれていました。しかし、「認定看護師」や「専門看護師」等の様々な資格が混在している現状を踏まえ、これらの整合性をどのようにするかという問題や、現行法の範囲内で可能な業務要件や看護師の業務範囲について整理し、高度な能力を持つ看護師も含めて評価した上で、それを基に法改正の議論を進めることが必要という意見が強く主張されています。

(2)保健師の役割と業務範囲

 日本看護協会が「チーム医療の推進に関する検討会」に提出した意見書では、保健師の役割拡大についても言及し、保健指導における血液データの活用が有用とする一方で、血液検査の実施には医師の指示が必要となるため、「スムーズな検査ができない」との主張も掲げました。これにより、健診項目範囲内の血液検査の保健師による指示・実施が可能となるような要望も明らかにしました。
 看護師の業務範囲拡大に関する議論が活発化し、新たな職種導入という道筋が示されたことから、看護師ばかりではなく医師や医療行為と密接に関わる業務を担う職種については、厚生労働省はその業務範囲に対し、検討を行ったうえで拡大もしくは縮小など、職種間の業務範囲について混乱が生じないような工夫も必要になるでしょう。

(3)その他職種の担う業務範囲の今後

 「特定看護師(仮称)」モデル事業の着手は、資格を要件に入れることに関して、現段階での法改正に慎重な姿勢を示す関連団体も多いことから、NP等を含め、看護師の業務範囲拡大の要件を広く、そして緻密に議論するための大きな一歩となるはずです。
 また、「特定看護師」についても、今後その名称の変更や、実際に担うことができる医行為の内容に関する検討がなされ、NPや診療看護師の資格化や導入についての議論が進められるものとみられます。
 前述のように、焦点となっていた「ナースプラクティショナー」や、「フィジシャン・アシスタント(診療看護師)」の導入に関しても、資格化などの可否については引き続き検討の方向性が示されたことから、限られた範囲ながら一定の医行為が認められる、もしくはその職種の業務範囲に含まれると解釈されるなど、従来とは異なる業務範囲を持つ職種が増えてくる可能性があります。
 それが、法改正などを要するものと判断されるのかは、現状では不透明ではありますが、当事者となる職種や団体と医療機関側、さらには医療を受ける側である国民や社会の受容が尊重されるべきといえるでしょう。